[壮月一八]
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2010.05.25(Tue)


「それじゃあ、またね。」

 彼女は真っ直ぐに歩いていった。背筋正しく、迷うことなく、少し重い荷物を持って彼女は人ごみに消えた。彼女の行く先を知っていても、彼女がどこに行ったのか既にわからなくなってしまっていた。そこにあるのは、見知らぬ人の背中ばかりだった。

 改札の手前に残された私たちは顔を見合わせて、同じように笑った。

「帰ろうか。」

「帰ろう。」

 彼女の電車は既に駅を出発していた。次の電車のアナウンスが人で溢れた駅の中に響く。人の流れを留めていたことに気付いて、慌てて隅のほうへ寄った。

「車、出すね。ちょっと待ってて。」

  

「よかったね。」

「そうだね。」 

 またね、と言った彼女は、まるで新生活に胸を膨らませる学生のように見えた。ほんの数年前、彼女は同じようにこうして街を出て行った。そのときのことを私はよく知らない。私も彼女と同じように、途端に広げられた目の前の世界に夢中だったせいだろう。あの時は皆、自分のことで精一杯だった。今でもそうなのかもしれない。けれど私たちは、ほんの少し大人になっていた。

「うまくいくといいね。」

「本当にね。」

 それでもまだ私たちは、彼女が見ている夢を知らない。むしろ、あのころの方が知っていたのかもしれない。

「元気だといいよね。」

「大丈夫でしょ。」

 私たちには、平凡な祈りの言葉しかない。それでも私たちは祈らずにはいられなかった。


「白い祈り」
title from のんびり+
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