[壮月一八]
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2010.05.24(Mon)


 頼りなく空に上っていく煙を見送った。髪が煙草臭い。誰のせいでもない自分のせいなのに何故だかひどく誰かを責めたくなった。少なくとも煙草のせいではあるのだから、煙草に当たるのは間違いではない。ぐしゃりと潰して、また新しい煙草に火を点けた。何の意味もない。
 
 いつの間に私は煙草を咥えるようになったのだろう。ゆらゆらと目の前で白い煙が揺蕩う。決して安くはないこの嗜好品が、気付けば当たり前のように鞄の中にあった。吸い込めもしないくせに勿体無いと誰かに言われても、止める事はできない。

 浅く吸って、煙を口の中に閉じ込める。そして細く息を吐き出した。仄かに温かな甘さが私の顔を覆った。煙を吐き出す瞬間のこの香りを感じるたびに、女の子の物ではないよ、と笑った人がいたのを私は思い出す。もう、いつだったかは思い出せないが、香りだけは私の記憶から結びついて離れない。

 その人は上手に甘い香りのする煙草をゆっくり呑んでいた。あっという間に終わってしまう私の煙草とは違う。見ていてとても魅力的な煙草だった。吐き出す煙すら、憧れてしまうような煙草だった。これが紫煙と言うのではないかと、煙草で遊び始めた私は思ったのだった。

 あまりにも魅力的だったので、私は教えを請うた。上手く煙草を吸えるようになりたいのだ、と言うと、その人は曖昧に笑ってそんなことはできないと応えた。どうして、と尚も喰い付いた私の頭に手を乗せて、女の子の物ではないよと言って折角の煙草を潰してしまった。

 私はその人にとってただの子供だったのだろう。例え私が大人になっても、その人にとっては永遠に子供のままなのだと、いくら青い私にもわかってしまった。その手に染み付いた甘い香りのせいで私の胸の奥が痛んでいたとしても、私はただの女の子だったのだろう。

 それから随分と煙草を咥えてきた。それでも未だ、あの人のような呑み方はできない。もしかするとそのせいで私は飲み込めもしない白い煙を吐き出し続けているのだろうか。それなら未だ私はきっと、女の子のままだ。紫色の煙には、程遠い。


「紫色の空」
title from のんびり+
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